公務員が不動産投資(≒副業)をするのは禁止?、きちんと掘り下げてみた

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うちの会社は副業禁止だから不動産投資なんて・・・。
税理士としてセミナーをやっていて必ず聞かれる質問です。
そもそも副業禁止の考え方を理解していますか?
公務員のオフィシャルルールから副業規制について学んでみましょう。

1.副業を禁止にするそれぞれのスタンス

① 民間企業の場合

  民間企業が副業をどこまで認めるかは個々の会社の就業規則で規定しています。
  とはいえ、個人の自由を縛るからにはそれなりに大義名分が必要。
  企業が副業禁止を設ける大義名分は次の3つです。
⒜ 本来職務と重複する兼職(勤務時間が重複するなど、そもそも両立し得ない職務)
⒝ 副業で過度な長時間労働が予想される(本業の労務提供に支障がありそうだから)
⒞ 競業他社における就労(情報漏洩のリスク)

 この他、証券会社・公認会計士といった一部の職業に限りますが、株式・証券の投資はインサイダー取引となるリスクを孕むため認められないといったケースもあります。
 以前お会いした証券会社勤務の方は、株式を買ってもいいが購入から売却まで半年以上空けなければいけない(投機的な取引はできない)といった話をしていましたね。

 不動産投資の場合、大家業として規模が極端に大きくならない限り、いずれの条件にも抵触しないものと考えられます。

② 公務員の場合

 国家公務員法という法律レベルで副業について具体的なルールを設けています。
 詳細はこれから見ていきますが、趣旨ベースでの考え方は次のとおり。

 一般職の国家公務員には「全体の奉仕者」という基本的性格があります。
これと矛盾する立場に立つことを防ぐために、職務の公正な執行、職務専念義務及び公務の信用を確保することが求められます。
このため、これらの確保に支障をきたすおそれが高い自営兼業は、広く認めるべきではないと考えています。

 さすがと言いますか、表現が固い。。。
 要約すれば公務員としての理念を侵さない兼業であれば、許容できるとも読めますね。

2.公務員のオフィシャルルールをかみ砕いていこう

① オフィシャルルールの核となるところ

 公務員の兼業に対する考え方は、国家公務員法第103条及び人事院規則14-8に詳しくま
とめられています。
 読みやすくするために超要約版にしていますが、ポイントはこの当たり。

⒜ 職員は、営利企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員、顧問若しくは評議員の職を兼ね、又は自ら営利企業を営んではならない。
⒝ 上記⒜は、人事院の承認を得た場合には適用しない。
⒞ 人事院は、上記⒜がその職員の職務遂行上適当でないと認めるときは、その旨を当該職員に通知することができる。
⒟ ⒞に対し審査請求をしなかった場合又は審査請求による調査の結果、通知内容が正当であると裁決された場合は、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。

 やっぱり駄目なんじゃんと思った貴方!法律は規制のために存在します。
 また、特別に許す(例外規定)が必ず存在するので、もう一度よく読みましょう。

⒜ 職員は、自ら営利企業を営んではならない。
⇒営利企業を営むというのがどのレベルなのかというのがキモです。
 例えば、株主優待券欲しさにマックの株券持っているだけで<企業を営んでいる>といわれたらさすがに違和感がありますよね。
 他に収入があったらすぐNGなのではなく、本業(と取られるレベルの生業)が他にもあるとNGだという意味合いです。

⒝ 上記⒜は、人事院の承認を得た場合には適用しない。

⇒本業のレベルでも勘弁してもらえる例外ケースもあるよということです。

⒟ ⒞に対し審査請求をしなかった場合又は審査請求による調査の結果、通知内容が正当であると裁決された場合は、人事院規則の定める期間内に、その企業に対する関係の全部若しくは一部を絶つか、又はその官職を退かなければならない。

⇒本当にダメな場合は、生業を辞めるか、公務員を辞めるかどっちか選びなさいということですね。バレた=即クビという事ではない訳です。

② 不動産投資に落とし込んで考えてみると・・・。

⒜ 本業と取られるレベルの生業かどうかのジャッジ

  内容ごとに細かく規定されていて、不動産投資だと次のどれかに引っかかると本業です。
 ① 不動産の賃貸が次のいずれかに該当する場合
  イ 独立家屋の賃貸については、独立家屋の数が 5棟以上であること。
  ロ 独立家屋以外の建物の賃貸については10室以上であること。
 ② 駐車場の賃貸が次のいずれかに該当する場合
  イ 建築物である駐車場又は機械設備を設けた駐車場であること。
  ロ 駐車台数が10台以上であること。
 ③ 不動産又は駐車場の賃貸に係る賃貸料収入の額(これらを併せて行っている場合に
  は、これらの賃貸に係る賃貸料収入の額の合計額)が年額 500万円以上である場合

⒝ 特別に許すかどうかのジャッジ

  職員の自営については、次のすべてを満たす場合には、承認を得られることも。 
 ① 官職と営利企業との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
 ② 職務の遂行に支障がないこと。
 ③ 国家公務員法の精神に反しないこと。
  官職という言葉は耳慣れませんが、要はその人の仕事内容だと思ってください。

  不動産又は駐車場の賃貸に係る自営だと、次のいずれにも適合すれば可能性ありです。 
 ① 官職と賃貸との間に特別な利害関係又はその発生のおそれがないこと。
 ② 賃貸に係る管理業務を事業者に委ねること等により職務遂行に支障が生じないこと。
 ③ その他公務の公正性及び信頼性の確保に支障が生じないこと。

 ね。意外と何とかなりそうな気がしてきたでしょ。

 ちなみに承認を受けるためには申請書を出す必要があって、その様式はこんな感じ。

 自営兼業承認申請書が正式名称です。

3.ということで公務員の不動産投資についてまとめ!

 正攻法で副業をする場合でもOKとなる場合があるということわかりましたかね?
 ここまでの内容をまとめると次の通りです。出でよ図解!

4.おまけ①~民間企業の場合はどうするか~

  民間企業の場合、就業規則次第となるため明確な回答はできませんが・・・

① 正攻法(きちんとOKをもらうのであれば)

 ⒜ 就業規則を確認しましょう
   副業の話を言わずに就業規則を確認できるのであれば、就業規則を確認が一番です。
   公務員に習い、ここまでならOKとハッキリ書いてあるケースもあります。
 ⒝ 相談する際の一工夫
   明確ではない場合、たらればの話として相談すると良いかと思います。
   両親が賃貸物件を持っており、将来相続する可能性があるのですが…。
   という切出し方が一つの無難な方法でしょう。
   相談先は(正確な回答を答えることができるので)労務・総務の方が良いと思います。
   上司に聞いても感情・感覚的な答えしか返って来ませんので、おやめ!!

② こっそりやるなら・・・(自己責任でお願いします)

 不動産投資を始めた後の確定申告だけは注意してほしいものです。
 それを除けば、社内の人に相談でもしない限り、気づかれる要素はありません。
 ⒜ 会社の給料からは住民税が天引きされます。
   不動産投資の黒字・赤字があると、不動産投資に係る住民税の扱いが問題になります。
 ⒝ 不動産投資で黒字となった場合、確定申告書にて住民税の支払い方を選べます。
  イ 給料から不動産投資に係る住民税も天引きしてもらう方法
  ロ 不動産投資に係る住民税は自宅宛てに納付書を送ってもらい、個人的に払う方法
    で!イを選んでしまうと、給料に対して住民税が多すぎて副業の存在を疑われます。
 ⒞ 不動産投資で赤字となった場合、給料から天引きする住民税が少なくなります。
   こちらは、個人的に還付を受けることはできません。
   ただ、税金が減る理由はいくらでも説明できます。
  イ 多額の医療費がかかったので、医療費控除の確定申告をした。
  ロ ふるさと納税をした      ・・・etc
   うまく説明してくれ給へ!
 ⒟ 巷ではマイナンバーからバレるとか言いますが、、、
   
アレは嘘です。
   マイナンバーは国が税金・社会保険・災害時の安全確保のためにのみ利用するものです
   企業や銀行などは報告の際の管理番号として書いているに過ぎません。
   企業側が勝手にマイナンバーから情報を調べるのは難しいです。
   なにより、やっていたら企業側が完全にコンプライアンス違反です。

5.おまけ②~株式・FX・先物・ビットコインでもダメなときはダメよ~

 やや私見ではありますが、会社員も公務員もダメと言われる要素の1つに職務の遂行に支障をきたすため!あります。
 信用取引やレバレッジを強くかけて、年がら年中スマホをいじっているようだと、これらの投資でも懲戒処分を喰らう充分な理由になりえます。
 何事もほどほどが一番だね!

という今回の記事でした~。
(めっちゃよくまとまった気がする。)

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